更新日:2024-12-09
家族信託の相談でよく聞く悩みです。
たしかに、自分(親)が築き上げてきた財産を子に任せることに不安を感じるのは当たり前かもしれません。
家族信託をせず自分で管理し続ける選択肢もあるでしょう。
しかし、認知症等で意思判断能力が喪失してしまうと、途端にアパートの経営は立ち行かなくなります。
賃貸契約や修繕などすべての契約行為ができなくなるからです。
空室があっても賃貸募集できない、建物を改修したくてもできないなど、
どうすることもできないアパートがあることで配偶者や子が大変な思いをするかもしれません。
そこで本記事では、アパート経営を託しても子が困らないために家族信託する前にしておきたいことをお伝えします。
※■関連記事■
不動産を家族信託する方法と信託後の売却方法とは?不動産のプロが徹底解説
アパートを家族信託で子に託すには、次のことが必要です。
この2つをもって子が親に代わってアパート経営をすることができます。
より詳しく家族信託を知りたい方は
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します(トリニティ・テクノロジー株式会社様の記事です。分かりやすく纏められています)
を、ぜひご覧ください。
家族信託するときは、まず託す相手(受託者)やどのような権利を持たせるかを決めなければなりません。
受託者には本人(親)の財産の管理や処分の権限を持つわけですから、できれば安心して託せる人が好ましいですよね。
赤の他人に託すのはさすがにちょっと不安でしょう。家族や親族内に信じて託せる人がいれば最適です。
親よりも若い方の方が認知症や死亡リスクが低いので、受託者になるのは子であることが多いです。
また、当社の経験上、受託者になっている方の基準として次のことが挙げられます。
親や家族がひとりにすべて託すのは大変、少し不安もあるというときは、受託者を2人にしたり、信託監督人というサポート役をつけることがあります。
家族信託では、アパートの管理、処分といった権限を子(受託者)が持つことになります。
もしアパートを売却して欲しくないのなら処分権限は外さなければなりません。
処分権限をどうするか判断基準の一例
など、「このようなときには売却してもいい」というお考えでしたら、処分権限は外さない方が良いでしょう。
子がアパートは必ず欲しい!と希望してその意思が変わらないのであれば処分権限を外してもいいかもしれません。
なお、この処分権限は、親の意思判断能力があるうちなど一定条件のもと、契約した後に外すことも、契約後に追加することもできます。
家族信託さえすればアパート経営は大丈夫でしょうか。
これは大丈夫な面もあれば、家族信託しただけでは大丈夫ではない面もあります。
大丈夫な面は、オーナー(親)の意思判断能力が喪失しても子(受託者)がアパート経営を続けられることです。
一方、大丈夫ではない面は「親がおこなってきたアパート経営を子も同じようにできるのか?」ということです。
アパート経営に関係することを子に伝えておかなければ、うまくいくとは言い切れません。
これからアパートを家族信託する前にやっておきたい5つのことをお伝えします。
当たり前のことですが、アパートがどこにあって部屋数や賃料収入、建物の状況などを受託者である子に伝えることが必要です。
そして、これまで起きた問題とその解決方法、いま抱えている問題なども詳しく伝えることが、より重要です。
収入と支出などは、大雑把にではなく事細かに伝えましょう。
▼収入の例
▼支出の例
※PM=プロパティマネジメントの略で、一般的に賃貸管理会社のことを指します。
※BM=ビルメンテナンスの略で、清掃会社や建物修繕をおこなう会社を指します。
管理会社に管理を委託していたら毎月の収支報告書に記載があるのでそれで確認できます。
確定申告書が手元にない場合で顧問税理士がいれば取り寄せましょう。
土地や建物、入居者とのトラブルなども共有しておきましょう。
現状起きている問題点の他に、これまでの問題点とその解決方法について子と共有しておくと、同じようなことが起きたときの対処方法が分かります。
問題ではありませんが、入居者の入れ換えの度にリフォームが100万円以上かかるなどコスト負担が大きいものも伝えておきましょう。
このような問題点をしっかり共有しておくと、いざという時の対応が後手に回らず、これまでのやり取りの情報があるため、入居者や関係会社の言いなりにならず、素早く対応できるようになります。
「あなたの親のときはちゃんと対応してくれていた」なんて相手方に言われたときに、親がどのような対応していたかを子が知っておくだけでもだいぶ対応が変わります。
アパートの現状を伝えるときに、口頭でなく書面があったほうがいいですよね。
代表的な書類をお伝えしますので、ご用意ください。
このような情報があることで不動産の状況をより正確に把握できます。
もし、これら情報が手元にない場合は、
などで対応しましょう。手元にないからと言ってそのままにしておくと、いざ管理を託す時に子が困ってしまいます。
物件の情報があるだけでも子はずいぶんと助かりますが、アパートであればクレームの対応方法など実務的なことについても伝えられるようにしましょう。
これまでどのような対応をしてきたのかを伝えると、子はそれを基準にしっかりと対応できるようになります。
アパートを今後どのようにするのか、重要な決断に迫られたとき専門家から公平なアドバイスがもらえる環境があるほうがいいでしょう。
まずは家族信託契約を組成してくれた司法書士などの専門家がパッと思いつきますね。
そしてその専門家から、不動産と相続に精通した不動産コンサルティング会社を紹介してもらうことでもいいでしょうし、
インターネットで【不動産 相続 家族信託 プロ】のように検索して連絡してみてもいいでしょう。
『家族信託したアパートの実務上や相続のことを専門家に相談できる』環境を作ることで、親としても安心ですし子も不安が減ることでしょう。
実際に私たちも親や子の相談役として相談を受けアドバイスしています。
このようなことを加味して検討しましょう。
そして
など、家族でできること、できないことを明確にし、依頼内容を決めましょう。
専門家を頼って得られる価値は、適切な選択肢・情報の提供があることだと考えています。
子の財産管理に不安があるときは、これらの提供がある環境を作っていくことが、不安を取り除く方法でしょう。
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家族信託の相談は誰にする?あなたが安心して任せられる専門家を見極める3つのポイント
家族信託を組成したら、賃貸借契約やライフラインなどの名義変更をします。
詳しくは、「家族信託契約後に不動産で必要な手続きとは?忘れがちなポイントをやさしく解説」にまとめましたのでご覧ください。
賃料振込先が親名義の口座のままだと、振り込まれた賃料を子(受託者)が管理する口座へお金を移動する手間が発生するので、早め早めに準備しておくことを推奨します。
本記事を読んでいただいた方へ、プロサーチ株式会社では、アパートを家族信託したほうがいいのか、信託見積もりが欲しい、信託後の注意点や、いますべきことなどについて無料相談をお受けしています。
アパートを家族信託するときの信託組成サポートや、実務上のアドバイスや、各種手続きをいたします。
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自分(親)が築き上げてきた財産を子に託すことは勇気や覚悟が必要でしょう。不安があるのも当然だと思います。
しかしそれは子にとっても同じかもしれません。
しっかりと財産管理するためには、親が知っているアパートの情報をすべて子に伝えることや、専門家に相談できる環境を整えるなどが必要だと考えています。
このような不安がある方は、家族信託と相続、不動産に詳しい専門家に相談することをお勧めします。