所有リスクと売却判断の確認

更新日:2024-04-25

所有リスクと売却判断の確認

「親が山奥にある不動産を所有していますが、相続して困ることはありますか?」
「売れそうにない不動産があるのですが、持ち続けるリスクはありますか?」

使う予定がなく、売れずに困っている不動産を保有し続けるとき、どのようなリスクや負担があるのでしょうか。
自分で使っている別荘地や山林、畑などの不動産は、使用し続けている最中に問題を感じることは少ないでしょう。
しかし、その不動産を子に相続させるとき、子が使う予定もなく売れないと知ったとき一気に問題意識を持ち始めるのです。
こうした不動産を「不要不動産」といいます。この不要不動産は、親が元気なうちに手放しておくと、税金負担が減り、様々なリスクの回避に繋がります。
それでは、親子・家族で不要不動産の売却タイミングの確認や、不要不動産を持ち続けるリスクについてお伝えいたします。

本当に売却してよい不動産なのか?

まず確認しなければならないのは、「本当に手放していいのか」ということです。

相続の相談を受けていると、「子はいらないって言うと思うわ」「この山は価値があるから子ども達に残してあげたい」など、子の気持ちを推測したり、決めつけていたり、子に考えを訊いていないと感じることが多いです。

上記のフローチャートは、親が不動産を必要・不要と判断しても、子の考えひとつで残すべき不動産なのか、売却する不動産なのかが決まることを表しています。

親が必要で使っているうちは売却できませんが“相続した後に売却する”ことになるでしょうし、
親も子もいらないといっているのであれば“直ちに売却した方がいい”ということになります。
親も、子も、「この不動産はいるの?」と直接ちゃんと確認することで、不要不動産かどうか決まります。ぜひ、思い込みで判断せず訊いてみてください。

不動産は手放さない限り、所有者としての責任や負担が続きます。
売れる不動産であればすぐにそのリスクから解放されますが、売れないと持ち続けることになります。
そして、放置したりするとペナルティもあるので注意が必要です。

売れずに困っている不動産の一例

・周りも空き家や空き地が目立つ空き家状態の実家
・家がほとんど建っていない廃れた別荘地
・場所の特定すら難しい山林
・耕作放棄されている畑
・原野商法で購入した土地 など

このような不動産をお持ちでしょうか。
お持ちの場合に発生する、主な5つの所有者リスクについてお伝えします。

(1) 固定資産税等の負担
(2) 管理費等の負担
(3) 所有者責任
(4) 詐欺の対象
(5) 相続人の間で押し付け合う

(1) 税や管理費などの負担
固定資産税・都市計画税は賦課課税といって、1月1日時点の所有者に対して地方自治体から一方的に課税される税金です。つまり所有し続けている限り。必ず負担しなければなりません。

固定資産税について法改正がありました。

建物を適正に管理せず朽廃等させ周辺に悪影響を及ぼしている場合、地方自治体から「特定空き家等」や「管理不全建物」に指定されます。そうなると固定資産税の減免特例(住宅用建物の敷地は税金が安くなるようになっています)から除外され、その建物の敷地の固定資産税等が約4倍になります。

相続税が課税される場合、売れない不動産を相続する相続人は、相続税を支払って取得することになります。

(2) 管理費等の負担
不動産は持っているだけで様々な費用負担をしなくてはなりません。
・固定資産税、都市計画税
・維持管理の費用(別荘地の管理費や、植栽剪定など)
・火災保険料 など 

1年間にかかる費用を月額で考えてみれば、金額的には大したことはないと感じるかもしれません。しかし、売れないので、祖父母の代から孫の代まで相続するとなると、そうはいっていられなくなります。

例:子も孫も使う予定もなく売れない山林
【前提条件】
・相続税評価額100万円
・固定資産税1.4万円/年
・相続税率30%
・相談時の年齢 祖父母が現在70歳、子(40歳)や孫(10歳)がいる
(祖父母のこれまでの費用負担は考慮しない)

1)祖父母:80歳で相続発生 10年間で固定資産税が14万円
2)子:50歳で相続し80歳で相続発生 
   ・相続税30万円
   ・相続登記費用10万円
   ・固定資産税42万円(子が亡くなるまで30年保有)
  計82万円
3)孫:子の代と同じ82万円

祖父母の代から子の代まで税金を合計で178万円も負担することになります。

祖父母の一代だけでみれば大した負担と感じないかもしれません。しかし長い期間で考えてみると、不要不動産のために3世代にわたり178万円も負担することになるのです。そして売れないのですから、さらに次の世代も続きます。

(3) 所有者責任
所有している限り、所有者としての責任はずっとついてきます。

・空き家を囲む老朽化した塀(所有)が倒れて通行人が怪我をした
・斜面土地を所有していて、雨が続き土砂が下の家に流れてしまい損害を与えた
など、自然災害によるものや、老朽化や人為的(放火等)によるものなどで、第三者の身体や財産等に損害を与え、損害賠償問題に発展するかもしれません。

いつ何時でも所有者としての責任があるということを知っておくべきでしょう。

(4) 詐欺の対象
売れず困っている不動産所有者を狙った詐欺があります。独立行政法人国民生活センターでも警笛を鳴らしており、手口が巧妙になってきているので注意が必要です。

どのような手口なのでしょうか?

まず、不動産会社を名乗る者から次のような手紙が届いたり、自宅に突然訪問されたりします。

「あなたの不動産を買いたいと言っている人がいる。先に不動産調査が必要です」
「絶対に売れますよ、でも先に土地測量をしておく必要があります」

あたかも買い手がいるような口ぶりで、「調査費」や「測量費」といった名目で30万、50万円といったお金が必要だと言ってきます。そのお金を支払ってしまったら最後、そのまま連絡が取れなくなってしまいます。売れるかもしれないと期待した方の気持ちに付け込んだ詐欺です。

このような詐欺から自分や親を守る術、対策があります。それは、「先にお金を要求してくるケースは危険」という認識をまず持つことです。そして、そのような話がきたら、すぐに判断せずに、家族や知人、地元の不動産会社、弁護士や税理士等に早めに相談するようにしましょう。

独立行政法人国民生活センター:より深刻に!「原野商法の二次被害」トラブル-原野や山林などの買い取り話には耳を貸さない!契約しない!-

(5)相続人の間で押し付け合う
「売れない不動産」は相続の場面で揉める原因、後々の火種を残してしまうことあがります。

一般的に誰しも価値や思い出がある不動産は相続したいと考えますよね。売ろうと思えば売れるし、使う予定があればちゃんと管理しようと思います。

しかし、使う予定はなく売れない不動産だとしたらどうでしょうか。相続したいですか?

きっと相続したくないですよね。もし相続人全員が相続したくないと言ったらどうなるのでしょうか。その不動産だけ相続放棄できるのでしょうか。

その不動産だけを相続放棄することはできませんので、相続人で話し合いするしかありません。そうなると相続人の間で押し付け合ったりして険悪なムードになることがあります。

・力関係の弱い相続人に押し付ける(ずっと恨み続ける)
・相続人で共有する(相続の度にネズミ算式に共有者が増え、塩漬け状態)
・プラスの遺産と引き換えに相続する(その相続人がずっと保有することになる)

上記のようなよくない状態になることが大半です。はたして親は、子は、このようなことを望むのでしょうか。安易な気持ちで判断すると、後々大変なことが待っているのです。

親が元気なうちから売れない不動産の問題に取り組むことが大事です。

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