更新日:2023-02-13
「隣の家がずっと空き家のままで、放火されたり不審者が居ついたりするのではないかと不安だが、所有者がわからず困っている」
「家の土地測量のためお隣さんに立ち会いをお願いしたいのに、いまの所有者がわからない」
「道路や公園をつくりたいが、所有者が不明で公共事業が進まない」
このように所有者が不明な土地は、さまざまな問題や悩みを引き起こすことがあります。
みなさんの家の周りにも空き家や空き地があるのではないでしょうか? 実は、日本全国に所有者不明の土地が、九州の面積を超えるほどもあるというのです。
バブル期と違って現代は、不動産を持っているだけで価値が何倍にも増える時代ではありません。
中心都市ではない限り資産価値は上がらず、相続する子はその不動産を使う予定もない、といった理由から、いつしか土地が見放されてしまうようになりました。これからも所有者不明の土地はますます増え続けるでしょう。
この流れに歯止めをかけるため、政府は不動産の相続登記義務化を決定しました。
ここからは、相続登記義務化の内容や、相続登記をしておくべき理由などをまとめます。
親など亡くなった方(被相続人)から、自宅やアパートなどの不動産を相続した場合、相続した人(相続人)がその不動産を自分の名義に変更する手続きを「相続登記」と言います。
相続登記には亡くなった方や相続する人の戸籍や印鑑証明などの書類を準備して、対象不動産の住所地を管轄する法務局に申請します。
不動産を持っている方が亡くなると、相続によって不動産の所有者が変わります。
このとき、相続の開始または相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内に、亡くなった方から相続した人へ不動産名義を変える相続登記の手続きをしなければならなくなりました。
この相続登記の義務化は2024年4月1日から施行されます。
義務化された背景には、所有者不明の土地は不動産取引や土地活用が円滑に進まなくなるという事情があります。
先ほどお伝えしたように、広大な不動産が所有者不明の状態になっています。これ以上増えてしまうと、国も公共事業への悪影響が考えられることから見過ごせなくなり、歯止めをかける措置を講じたということでしょう。
相続登記が義務化されると、正当な理由なく登記申請を怠ったときは、10万円以下の過料が科されます。
ペナルティを科していることからも、国は相続登記を浸透させることに本腰を入れているのがわかります。
相続登記義務化でよくある質問が下記の3つです。
不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付けるとしています。
しかし、相続人の間で何かしらの理由で遺産分割協議が進まず3年以内に相続登記ができないというケースを想定し、「相続人申告登記」が創設されます。
この申告登記を法務局に申請することで、相続が発生した旨と、当該所有権(不動産)の登記名義人の相続人である旨を申し出ることになり、正式に相続登記を完了していなくても「相続登記の義務を履行した」とみなされます。
そして、遺産分割協議を終えた日から3年以内に相続登記をすれば、10万円以下の過料を科されることもなく、相続登記の義務を果たしたこととなります。
相続登記義務化は、2024年(令和6年)4月1日以降の相続だけではなく過去の相続にも及びます。つまり、たとえば2021年の相続でも、2000年以前の相続でも義務化の対象となるのです。
相続登記申請を受ける行政機関である法務局は、住民基本台帳へのアクセス(法務局内部のみの利用ができる)によって、相続の発生を知ることができるようになります。
相続が発生したことは法務局で把握されるようになるので、相続登記をしないまま放置することはできません。
相続登記を申請しないと催告書が届き、そのまま放置するとペナルティが課せられますから、相続で不動産を取得したら必ず相続登記をしましょう。
過去に相続で取得したものの、まだ相続登記をしていないという方も急いで手続きをする必要があります。
この相続登記義務化は所有者不明土地を減らすのが目的ですが、実はそれ以外にも相続登記をすべき理由があります。
不動産を売却するとき、その所有者(売主)を特定する必要があります。買主や所有権移転登記の手続きを行う司法書士などから所有者が誰なのかを確認されるからです。
不動産登記簿が亡くなった方の名義のままだと、所有者(売主)が誰なのかを確認できません。亡くなった方を売主とすることはできないのです。
不動産の売却をするときは、必ず相続登記をしておかなければなりません。
相続した土地にアパートを建てる、建物を第三者に賃貸するといった場合、ハウスメーカーや不動産賃貸会社に相談することになるでしょう。
相談を受けたその担当者は、不動産登記簿で誰が所有者なのかを必ず確認します。もし亡くなった方の名義であれば、「相続登記してください」と必ず言われます。
自分が相続するから大丈夫だと思っても、相続登記を終えてからでないとハウスメーカーなどの担当者も具体的な話をしたがらないはずです。
相続した土地にアパートを建築する予定を立て、金融機関に融資の打診をした場合、相続登記をしていないと、所有者が誰なのかわからないので融資してくれません。
つまり、相続登記が終わっていないと不動産を担保としてお金を借りることはできないのです。
相続登記をして所有者を確定してからであれば、金融機関は担保設定(融資)に応じることができます。
相続登記しないまま何年も経過すると、その間に相続が繰り返し発生して、気付けば相続人の数が増えていることがあります。
相続登記をするとき遺産分割協議書が必要となりますが、この遺産分割協議書には相続人全員の署名捺印が絶対に必要です。
相続人の数が10人、20人と増えれば増えるほど、相続人を特定する作業や署名捺印を相続人全員からもらうことが大変になります。
また、相続人が高齢で認知症になっていて意思判断能力が喪失していると、そもそも遺産分割協議に参加することができず、一般的には成年後見制度を利用し代理人を立てる必要があります。
亡くなった方と縁が遠くなればなるほど、遺産分割が成立しにくくなったり、代理人を立てるのが大変だと非協力的な対応を取られたりと、遺産分割協議をまとめることが難しくなるでしょう。
売れなくて困っている、不要な土地を国が引き取る制度が2023年(令和5年)4月27日から始まります。
この申請をするときの提出書類に少なくとも不動産登記簿は必要になるので、引き取ってもらいたい土地がある場合、相続登記は早めに済ませておきましょう。
相続登記がなぜ必要なのか、代表的な理由5つをお伝えしました。
相続登記を済ませておけば、スムーズに売却や有効活用ができたり、融資を受けたりできます。相続登記をしておかないと自分はもちろん、次世代にも面倒なことが起きるので、義務化されたから相続登記をするのではなく、早めに登記しておきましょう。
相続登記の申請をするには、被相続人や相続人の戸籍や身分証明書などのほかに、原則、「遺言」又は「遺産分割協議書」が必要です。
遺言があったり、遺産分割協議がスムーズに終われば、相続登記も楽に進みます。この遺言を残すときや遺産分割協議をするときは、本人(被相続人)の財産の一覧表が必要です。
財産の一覧くらいあるという方は、次の3点について確認してください。
いかがでしょうか? 財産の場所は知っていても、評価額など肝心な部分は知らないという方が多いのではないでしょうか?
財産の種類だけでなく、評価額や時価、債務、問題点などの情報が整っていると、遺言作成や遺産分割協議をスムーズに開始することができます。
評価額や時価、問題点などの財産分析や、遺産分けが自身でできないときは、相続に精通した専門家に相談することをおすすめします。